全日本ベッド工業会 2024年6月11日制定
自主行動計画策定の目的
家具、インテリア製品は、自室では安らぎや快適性をもたらし、職場では作業効率を高める役割を果たし、国民の豊かな暮らしに寄与する欠くことのできないものである。しかし、昨今の家具、インテリア産業を取り巻く環境は厳しさを増している。海外輸入製品との競争の激化や 2021 年から始まったウッドショックと呼ばれる木材の高騰、円安や世界情勢がもたらす原油価格や調達資材の高騰、コンテナ・人材不足による輸送コストの増大、少子高齢化に伴う人材不足による後継者や従業員確保の困難など、幾重もの課題に直面してきた。
こうした厳しい環境下では、家具、インテリア産業のサプライチェーンを構成する製造、卸売、小売、資材、機械、物流に関わる企業が相互に信頼し、連携してともに持続的に成長できる環境の整備が必要となる。また、近年では家具、インテリア製品を販売するインターネット販売事業者、住宅とセットで家具、インテリア製品を販売する住宅メーカー、販売ソリューションを提供する IT 企業など他の業界や業種から家具、インテリア市場に参入する企業も増え、サプライチェーンは複雑化している。
全日本ベッド工業会は、会員の入会資格を国内にてベッド・インテリア製造に関わる企業とし、家具、インテリアの製造企業が加盟している。そのため、相互の適切な信頼関係の構築ができるように法令遵守、適正な取引条件や労働環境等の確保について、十分な確認と考慮をしていく必要がある。
全日本ベッド工業会では、これまで適正取引にかかる関係法令および政府方針(※)について会員に周知し、会員企業各社は、適正取引にかかる関係法令および政府方針の遵守に努めてきた。こうした家具、インテリア業界のサプライチェーン全体で取り組んできた取引の適正化をさらに加速させるため、「適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定することとした。この自主行動計画によって、合理的な価格決定、コスト負担の適正化、支払条件の改善、生産性向上等に関する今後の取り組みをより一層進め、サプライチェーン全体での付加価値向上、競争力強化に努めていく。
※適正取引にかかる関係法令および政府方針
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、下請代金支払遅延等防止法(下請法)および同運用基準、下請中小企業振興法(下請振興法)および同運用基準、中小企業庁・公正取引委員会「下請代金の支払い手段について」、経済産業省「未来志向型の取引慣行に向けて」「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」等
I. 適正取引の推進に関する取組
1. 合理的な価格決定
① 受注者、発注者のいずれの立場であっても取引先との取引価格についての協議の場を「価格交渉促進月間(毎年 9 月と 3 月)」の機会を捉えるなどして、少なくとも年1回は設けるようにする。
② 定期的な協議以外でも、受注者側から労務費、原材料費、エネルギー価格などの費用変動を理由とした取引価格見直しの要請があった場合、発注者は真摯に協議に応じ、適切な価格転嫁を検討する。
③ 受注者から労務費変動による取引価格見直しの要請があった場合、業種や地域等に応じた一般的に公表されている賃金水準変化、最低賃金引上げ、物価水準の推移等を考慮して十分な協議をする。発注者が受注者に対して、労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を求める場合、受注者が公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づいて示した希望価格については、これを合理的な根拠のあるものとして尊重する。
④ 価格を決定するにあたって、発注者は下請法第4条第1項第5号の買いたたきとならないように注意しなければならない。買いたたきに該当するかどうかの判断は、下請法に関する運用基準(第 4親事業者の禁止行為5買いたたき)を把握した上で、適切な価格設定を行う。
⑤ 発注者が仕入価格の低減を要請する際に、合理的な理由なく一方的に自己都合のみによる価格の引き下げを要請しない。発注者の協力(大量発注や品質の緩和、工程見直し等)により受注者のコスト削減を図った場合は、その原価低減活動の効果を十分に確認して価格に反映させる。その際に、受注者の貢献度を考慮した上で価格を決定するものとし、受注者の努力によるコスト削減効果を一方的に取引価格に反映させないようにする。
⑥ 物流費については、荷主事業者と物流事業者が取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン(経済産業省、農林水産省、国土交通省)」を参照し、適正な運賃水準を反映するよう十分に協議を行う。荷主がトラック事業者に対して荷主都合で長時間の荷待ちをさせたり、契約にない附帯業務をさせるなど運送以外の役務等が生じる場合は、運賃とは別途にその対価となる料金を支払う。
⑦ 労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストが増加した場合には、予め定めた価格改定タイミングはもちろんのこと、その期中においても、価格変更を柔軟に行うものとする。特に原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す。
⑧「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(令和5年11月29日 内閣官房新しい資本主義実現本部事務局・公正取引委員会。以下「労務費の指針」という。)に掲げられている、「事業者が採るべき行動/求められる行動」を適切にとった上で、取引対価を決定する。その際、「労務費の指針」別添「価格交渉の申込み様式」の活用も併せ、労務費の上昇分を適切に転嫁できるよう協議する。特に、最低賃金(家内労働法(昭和45年法律第60号)に規定する最低工賃を含む。)の引上げ、人手不足への対処等、外的要因により下請事業者の労務費の上昇があった場合には、その影響を十分に踏まえる。
⑨ 取引先からの要請の有無にかかわらず、発注者から積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けていくことが望ましいことを十分に認識する。
2. コスト負担の適正化
① 発注者の自己都合による返品、製造委託した商品の受領拒否などによって受注者の利益を不当に害することがないように徹底する。
② 発注者が販売員や協賛金などの提供を受注者に強要し、一方的に受注者に対してコスト負担を強
いることがないように努める。発注者が受注者に従業員の派遣を要請する必要がある場合には、派遣の条件についてあらかじめ双方で合意を得た上で、派遣に必要な費用を負担する。受注者の従業員の専門的な知識や技術を必要としない作業に従事させようとする場合には、発注者が別途アルバイトなどを雇うことで対応する。
③ 発注者は、働き方改革が及ぼす取引先への影響(長時間労働等)に配慮しつつ、受注者の取り組みを阻害し、不利益となるような取引や要請は行わないように努める。やむを得ず短納期又は追加の発注、急な仕様変更などを行った場合には、受注者に発生する増加コストを負担するように努める。
3. 支払条件の改善
① 決済手段については、できる限り現金払いとし、現金比率の改善に努める。
② 約束手形による支払いは、電子記録債権による支払いへの転換を図り、2026 年を目途に利用を廃止するように取り組む。
③ 手形等により代金を支払う場合は、その現金化にかかる割引料等が受注者の負担にならないように改善に努める。
④ 手形等により代金を支払う場合、そのサイトは、60日以内とすることを徹底する。
4. 知的財産の取り扱い
① 発注者と受注者双方は、知的財産(特許権、著作権、意匠権、商標、営業秘密等)やノウハウを取引上扱う場合には、振興基準に定める内容のほか、「知的財産取引に関するガイドライン」
(中小企業庁)に基づいた取引を行うものとする。
② 発注者は、契約上知りえた受注者の知的財産やノウハウの取り扱いについて、受注者に損失を与えることがないように十分に配慮する。
③ 発注者は受注者に対して秘密情報の提供や開示を要求してはならない。また、契約上知り得た受注者の知的財産等やノウハウについて無断で使用してはならない。
④ 受注者は、自己の所有する知的財産について、特許権、著作権、意匠権、商標等の権利の取得、秘密保持契約による営業秘密化等により、管理保護に努める。
Ⅱ. 生産性・付加価値向上に関する取組
1. 取引先支援活動
① 各社は、サプライチェーン全体での生産性・付加価値向上の観点に基づき、適正な原価率及び利益を確保した上で、消費者に対する正価の信頼性の維持向上に努める。
② 各社は、サプライチェーン全体の機能維持のために、必要に応じて、取引先の事業継承が円滑に遂行されるように、経営改善の支援、後継者の育成、引継ぎ先のマッチング支援等積極的な対応を行うよう努める。
③ 各社は、取引先と連携して事業継続計画(BCP)の策定に努めるとともに、自然災害及びサイバー攻撃、感染症、国際情勢の変化などにより事業に影響が生じた際は、人命第一、地域復旧を優先しながら取引先の被害状況を確認し、取引上、一方的な負担を押し付けることがないよう十分に配慮する。また、影響を受けた取引先には、その復旧を支援するとともに、取引関係の継続、優先的な発注に配慮するよう努める。
④ 取引先の要請に応じて情報化支援策の支援・協力を行い、サプライチェーン全体の効率性向上に努める。取引先に対して電子受発注等を行う場合は、その効果やコスト負担等の説明を十分に行う。
2. 人材育成・教育の推進
① 各社は、下請法や下請振興法や運用基準等の関係法令の改正に合わせて、自社の社内ルールや業務マニュアルの整備・見直しを行う。
② 各社は、関係法令や適正取引の推進のために、適正取引に関する講習や研修などを実施し、社内への周知徹底を図る。
Ⅲ. 全日本ベッド工業会の取組
① 全日本ベッド工業会は、自主行動計画に掲げた事項が実行され浸透するように、会員企業に対して聞き取り調査及びアンケート等により、実施状況のフォローアップを行う。
② 全日本ベッド工業会は、会員に対してパートナーシップ構築宣言の実施を促し、すでにパートナーシップ構築宣言を実施している企業に対しては、宣言ひな形の改定や事業環境の変化に応じて見直しを行うように努める。
③ 全日本ベッド工業会は、適正取引や生産性・付加価値向上についてのセミナーや研修等を開催し、会員の理解促進を図る。